「歩いても 歩いても」考


樹木希林演じる、お母さんの「残酷さ」が


ぼっこりそこだけ切り離されたみたいに、


強い意気込みで演じられていたこと、


演出されていたことが


のどの小骨のようにひっかかっている。



残酷さ、は日常と切り離されたものであるはずがない。


日々のなかに、なめらかに「経験」はある。


その先の「思い」には、そうとしか自らを生かしてゆけない


当たり前の「残酷さ」がある。


本人が「残酷さ」を二面性として意識し、自らの在り方に加えていたら、


相当うさんくさいことだ。


(自警の念。)



「裏と表」みたいに、「光と影」みたいに、二面性として描くのは、


(是枝監督の描き方は、それでも自然な感情を


やさしめに観察する人の意思を感じたけど)


外から見た人の臆病さではないか。


残酷さ、受容・優しさ、


そこに溝があるはずはない。


本人にとっては、まったく同レベルの感情のつらなりだ。


と私は、今の自分に照らしあわせて思う。



私のこの感情が、

ただ言い訳しようとしているのかもしれないこの「当たり前の残酷さ」が、

それほど強い狂気でないことを祈りつつ。



夏のまぶしい光。


コットンのシャツ。


家族ゆえの不器用さ、


人の命を背負って生きなければならない、その重さ。


間に合わなかった、という思い。


「母」の人が、「息子」の少年の肩を


ごく自然に抱き寄せる、


その幾層にもかさなる温かみ。


ひっかかりもふくめて、意味深い映画だった。

卒業式と、その後


6月30日、卒業式、ぶじ済みました。


こんなに人よりまわり道しながら、こんな風にたくさんの人に
祝ってもらえるなんて、思ってもみなかった。
友人たちが花束を持って駆けつけてくれ、
入学当初からお世話になった先生方にも「よくがんばったね」
「なにも無駄にはならないね」との言葉をいただいた。
再会したクラスメイト達と「あのクラスは本当に楽しかったね」と思い出話に花を咲かせて、次に会う約束をし、
これから働く職場の先輩には、ぎゅうぎゅうハグして歓迎してもらい、
密かに憧れていた人にも、最後に写真を撮ってもらった。
ああ、苦しいこともあったけど、本当に幸福な学生生活だった、と心から思えた。


前日には妹と母が東京に集結し、母娘3人でたっぷり話した。
皆が、自分自身の足で好きな道を歩き始めようとしていること。
いろいろあるけど、これからは、それぞれが、すくなくとも
自分自身のことくらいは責任もって生きていけそうなことを、喜び合った。


資生堂パーラーエスプレッソ、めちゃくちゃ美味しくってびっくりした♪



7月1日、昨日が喜びの絶頂だったことを知る。
むしろ、これまで、待っていてくれたのかな、と。
物事は、順番でくるのだと。
これまでの努力、3ヶ月前に、水泡に帰していたこと発覚。
いや、ゼロに戻ったわけではないけれど。


平穏な日々のために、もう一山越えなくては。
そして、もう二度と同じ希望は持てない。


だけど、冷静。
ここまで築いていた、それぞれの人生は、変わらない。
一寸先の見えない時期を乗り越えたことで、輝きだした未来は変わらない。
私よりもダメージを受けているはずの人が、冷静に聞いてくれる。
いつもどんなときも、ものごとの良い面を見ようとする人たちのなかで
育てられたことを、幸せに思う。


卒業式のあと、母を見送ってから、
是枝監督の新作『歩いても 歩いても』を観た。
「人生は、いつもちょっとだけ間にあわない」
・・・でも。

祝い事つづき


ぶじ、卒業決まりました!
ああ、よかった。長かった。

卒業生リストに自分の名前を確認したちょうど同じ日に、
高校の友と、大学の友から、2通、結婚式の知らせが届いた。

よい知らせは重なるもんだな。


ここしばらく、ちゃんと動けない日々が続いていたけど、
それでも、なんとかキャップとガウンも借りられたし、
ギンレイホールでひさしぶりに映画も観られたし、
大丈夫。やっていけている。


内定者交流会は、2日あるうちの1日目しか出られなかった。
「軽装」という指定が、どのような服装をさすのか悩み、
結局スカートとブラウスで行ったけど、
おなかの丸みが気になり、ブラウスのしわが気になり、
ストッキングに汗のしみを見つけて悲しくなり・・・
などなどしていたわりには、
人と気楽に話せたし、飲み会でもそれほど空回りはしなかった。
(ちょっとはしたけど。
どうして、こう人に対して壁をつくってしまうんだろう。)



先日、DVDで観た『エディット・ピアフ 愛の讃歌』が
壮絶に良かった!!
主演のマリオン・コティヤールは、
おそらく私と歳はそう変わらないと思うのだけど、
ピアフの20歳から40歳代で死ぬまでを演じきっている。
死の間際は、麻薬とお酒でぼろぼろになって、
背中は丸まり、足は弱り、70歳くらいに見えるのだけど、
違和感がまったくない。


ああ、生きている!ということを、
生きているかぎり、求めるものが、希望が、あるということを、
歌によって、彼女のまなざしによって、実感できる。
こういう人が、世界にはいるんだ。
こういうものを、作る人がいるんだ、と。


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変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)

変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)

鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)

鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)

貴婦人と一角獣

貴婦人と一角獣

のんびりしたいな


卒論を提出して以来、

本当に「あれ」が通っているのだろうか、

卒業できるのだろうか、というびくびく感は絶え間なく感じているものの、

実際はかなりのんびりと過ごせている。


時間を無駄にできない性分が強くなったのはいいことで、

つねに頭か体をはきはき働かせていたい!と思えるものの、

それでも時間に追われない幸福は、感謝と共に満喫している。


先週末は、富士見の母を訪ね、あちらで祖母と合流して、

観光がてら松本にドライブした。

サナトリウムだった病院や、薔薇園を歩いたり、

母ん家の近くのパン屋さんが開いているカフェでランチをしたり、

日の光に満ちた、素敵な休日だった。


本は、Kazuo Ishiguro "Never Let Me Go"がなかなか進まず

やきもきするものの、平行して

日本の作家の軽めのものを、うきうき手にとったりもしている。

勧められていた「夜は短し歩けよ乙女」(森見富美彦)も

思った以上に面白かったし、

北村薫の「玻璃の天」も、文庫化がどうにも待ちきれなくて、

図書館で取り寄せてもらい、一日で読んだ。



読みかけのものでは小沼丹「懐中時計」、

ゲーテファウスト」(池内紀訳)、

カフカ「変身/掟の前で」(光文社古典新訳)

(丘沢静也訳・・・この人の訳には・・・首をかしげたくなるところもあるけど。)

ゼーバルトも、まだ一冊も読みきっていないのに、

また新しく買ってしまったので、今のところ4冊も手元にある。

ああ、はやく身辺整理を整えて、読みふけりたい。

この長い休暇期間のうちに、この作品のための時間を

たっぷりとって味わおう、きっと。


夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

玻璃の天

玻璃の天

去年から観た映画〜2008年6月17日

水の花
真夏の夜のジャズ
・母たちの村
・狩人と犬、最後の旅
・親密すぎるうちあけ話
X-MEN
X-MEN 2
・LOFT
バタフライ・エフェクト
アモーレス・ペロス


トランスアメリカ
X-MEN 3 The Last Stand
パイレーツ・オブ・カリビアン-デッドマンズ・チェスト-
岸辺のふたり ほか2本短編
・恋は足手まとい
・ゆれる
・ユナイテッド93
ハチミツとクローバー
・蜂の旅人
・ルイーズに訪れた恋は・・・


・もしも昨日が選べたら
・武士の一分 
・キンキーブーツ
・弓
やわらかい生活
紙屋悦子の青春
記憶の棘
ブラック・ダリア
ストロベリーショートケイクス
ディパーテッド


トリノ―24時からの恋人たち―
フラガール
サムサッカー
王と鳥
蟻の兵隊
カポーティ
・マーダーボール
・手紙(最近の邦画)
マリー・アントワネット
サンキュー・スモーキング


・おしゃれ泥棒
時をかける少女(アニメ)
ドリームガールズ
どろろ
・キング 罪の王
ヘンダーソン婦人の贈り物
・上海の伯爵夫人
サラバンド
・敬愛なるベートーヴェン
・ハッピー・フィート


・ニキフォル―知られざる天才画家の肖像
・太陽
・フェイカーズ
・ナヴァラサ
ホテル・ルワンダ
麦の穂をゆらす風
・ナイト・ミュージアム
・パフューム ある人殺しの物語
イカとクジラ
・映画のようには愛せない


・人生は奇跡の詩
トンマッコルへようこそ
鉄コン筋クリート
・ブラッド・ダイアモンド
パリ、ジュテーム
・サンシャイン2057
・ホリデイ
・007 カジノ・ロワイヤル
幸福な食卓
涙そうそう


・ラブソングができるまで
オリバー・ツイスト
明日へのチケット
愛の神、エロス
・(パリ、ところどころ)
・(キシュ島の物語
ハンニバル・ライジング
・エレクション
・RENT
たまゆらの女


・BABEL バベル
・ションヤンの酒家
リトル・ミス・サンシャイン
プラダを着た悪魔
スパイダーマン
コーカサスの虜
・主人公は僕だった
花様年華
メランコリア 3つの部屋
・あるいは、裏切りという名の犬


・ラッキーナンバー7
Vフォー・ヴェンデッタ
・300
・あなたなら言える秘密のこと
パイレーツ・オブ・カリビアン
・パプリカ
・毛皮のエロス ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト
善き人のためのソナタ
松ヶ根乱射事件
・ゾディアック


スター・ウォーズ エピソード4
・それでも僕はやってない
舞妓HaaaaN!!!
不都合な真実
モーツァルトとクジラ
・ブラック・ブック
今宵、フィッツジェラルド劇場で
・LUNACY 
グラストンベリー
・昼顔


ピンチクリフ・グランプリ
ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
・恋しくて
魔笛
ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団
・華麗なる恋の舞台で
レミーのおいしいレストラン
スチュアート・リトル
・STARWARS エピソードⅠ
・STARWARS エピソードⅡ


秒速5センチメートル
・カンバセーションズ
・絶対の愛
・Oceans13
・石の微笑
リトル・チルドレン
トランシルヴァニア
・あかね空
さくらん
世界最速のインディアン


恋愛睡眠のすすめ
・おっぱいとお月さま
・フラメンコ
・シクロ
・ステップ・アップ
約束の旅路
・ブラッド
・クイーン
ひなぎく(+チェコアニメ短編2本−毛糸玉の話、おかゆの話)
アバウト・シュミット


・シッコ
あるスキャンダルの覚え書き
ショートバス
ミス・ポター
ドレスデン 運命の日
・厨房で逢いましょう
プレステージ
キサラギ
・スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー
寂しい時は抱きしめて


・そして、デヴノーの森へ
・めがね
コマンダンテ
パーフェクト・ストレンジャー
サン・ジャックへの道
・ボルベール
フル・モンティ
赤い文化住宅の初子
地球交響曲Ⅵ(&監督トークショー
(・羅生門


・ロストポローヴィチ 人生の祭典
・ボンボン
・フランシスコの2人の息子
・待つ女
グレン・グールド 27歳の記憶
・〈もがり〉の森
・スクリーミング・マスターピース
・インベージョン
アヒルと鴨のコインロッカー
・明るい瞳


フリーダム・ライターズ
・ナンバー23
・イタリア的、恋愛マニュアル
・題名のない子守唄
・酔いどれ詩人になる前に
再会の街で
ベティ・ペイジ
・はじらい
・長江哀歌
スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師


ラスト、コーション
パンズ・ラビリンス
マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋
・Once ダブリンの街角で
ある愛の風景
・エンジェル
・エリザベス ゴールデン・エイジ
ライラの冒険 黄金の羅針盤
カフカ 田舎医者 ほか
・いのちの食べ方


魔法にかけられて
ダージリン急行
・ジャンパー
・ウェイトレス〜おいしい人生の作り方
・(タロットカード殺人事件
マイ・ブルーベリー・ナイツ
・モンゴル
王妃の紋章
・百年恋歌
フィクサー


・ハックル
素粒子
花の影
・大いなる陰謀
サラエボの花
・キューティー・ブロンド
・女帝
きみに読む物語
・スパイダー・ウィックの謎
アイム・ノット・ゼア


最高の人生の見つけ方
フローズン・タイム
チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
・山桜
ヒトラーの贋札
・やわらかい手
いつか眠りにつく前に
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
・ベニスに死す
・スターダスト


・ワサップ!

(計221本)

去年から読んだ本〜2008年6月17日

・GIFTS
・観光
・比類なきジーヴズ
・ギフト
・翻訳家の仕事
ジーヴズの事件簿
・ノリーの終わらない物語
・「ヴィーナスの誕生」視覚文化への招待
・語り女たち
空中庭園


紙魚家崩壊
・(ユルスナールの靴)
イラクサ
・(ジョン・ランプリエールの辞書)
・(Never Let Me Go)
フェルメールの受胎告知
老人と海
・めぐらし屋
・盤上の敵
・ねにもつタイプ
・VOICES
精霊の守り人
処女懐胎


・マダム・エドワルダ/目玉の話
カラマーゾフの兄弟(光文社)1〜5
・闇の守り人
アンリ・カルティエ・ブレッソン 知られざる全貌
・(なつかしく謎めいて)
・エリコの丘から
・オリガ・モリソヴナの反語法


・神を見た犬
・ちいさな王子
・(夜の言葉)
・ハッピイさん
・たいようオルガンetc
文芸時評という感想
・アイロンと朝の詩人 回送電車Ⅲ 
・日本人に一番合った英語学習法
・(ウォーターランド)
・夜の鳥
・初恋(トゥルゲーネフ)(光文社)
・鼻/外套/査察官(光文社)


・ニシノユキヒコの恋と冒険
高瀬舟/山椒大夫岩波文庫
・魔女の1ダース
・大つごもり/十三夜ほか
・英語達人塾−極めるための独習法指南−
・藪の中
・范の犯罪(志賀直哉
・海と毒薬
・いつまでもデブだと思うなよ
・SHINOの「美腰」でハッピー


桜の森の満開の下
・沈黙
・(英語のたくらみ、フランス語のたわむれ)
・その名にちなんで
・日本人の笑い
・千年の祈り
・いつか王子駅
・やみくも−翻訳家、穴に落ちる
・低炭水化物ダイエット
・夜愁(上・下)


・「脳」整理法
・脳を活かす勉強法
・(愛の続き)
・(蛇の形)
灯台守の話
・癌からの生還
・(名前と人間)
・必笑小咄のテクニック
・世にも美しいダイエット
・世にも美しいダイエット カラダ革命の本
・世にも美しいダイエット メニューブック
・世にも美しいダイエット 青菜ブック
・スプーンとフォーク ほか料理本いろいろ


・「朝2分」ダイエット
・1分骨盤ダイエット
・不実な美女か 貞淑な醜女か
・愛の法則
嘘つきアーニャの真っ赤な真実
サラサーテの盤
・夢の守り人
・説きふせられて
マンスフィールド・パーク
・バン・マリーへの手紙


・文字の都市
・MONKEY BUSINESS ① 野球号
・〈ことば〉の仕事
・河岸忘日抄(文庫版)
・回送電車1〜3
・(魔法の石板 ジョルジュ・ペロスの方へ)
・天使
・時雨みち
蝉しぐれ


・あなたがいれば1〜4(漫画)
・雲雀
・「待つ」ということ ほか鷲沢清一著作
・じぶん この不思議な存在
・(懐中時計)
・(ファウスト
夜は短し歩けよ乙女
・Never Let Me Go (再開)


(約100冊)

あいさつ

卒論アドバイザーの教授に、
いちども会わないまま論文をしあげて、提出した、と昨日書いた。


さすがに、まずいんじゃないか、とずーっとずーっと思っていた。
一年間まるまる。


提出はしちゃって、もうどうしょうもないけれど、
せめてあいさつだけでも、と思っていた。


昨日は、2駅となりまでお菓子を買いに行ったし、
論文で扱った本も渡そうと準備し、
あえても先生の時間がないときのこと考えて、手紙まで書いた。


が、結局、面と向かってあいさつしに行かれなかった。
授業の終わるタイミングとか、オフィス・アワーの時間に
自分の行動をあわせる気力がない。


卒論が終わってから、やるべきことをためる事に
たえられない気持ちが強まったままで、
けっこうてきぱきパワフルに動けている自分に
驚いたりもするのだけれど、
どこか一部でぶっつりと糸が切れてしまっているのも事実。


父親に対しての疑念が・・・ふたたび、ふつふつと湧き上がり
はじめていることもあるのかも。
「薬飲んでいる」との即答は、たぶんうそだと思っていたけど、
もうすこし、せめて2,3年は、もつといいと思っていた。


でも、期待はしないほうがいいんだと思う。
目の前の借金返済の道、いつか突然途絶えて、
また甘ったれの父親に寄りかかられて
臭気のなかを生きることになるのだと、ちょっと前もって
必要以上に悲惨なシナリオ、想像しておいてみてる。


わたしなりの、自衛だ。
心が折れて、人に心を閉ざさないために、最初から受け止めておく。


いま、この瞬間の自由を、ほんとうにすがすがしい気持ちで満喫しているのも事実。


これからもきっと、大きな山も一歩一歩越えていける、と
自分を信じられている幸せ。


手を抜かなくてもいい、ほんとうに大切なことを慈しんでいってよい、と思える幸せ。


人に好意を持ってもらえている実感。


これからどこへ行っても、何をしてもいい、
ほんとうにひとりぼっちでも、きっと生きていける、と
見通しをたてられている安心感。


ずっと、気持ちのいいベルベットの手触りのなかにいるみたい。


藤沢周平を読むと、ああ帰ってきた、と感じる。
切なさも、耐え忍ぶ気持ちも、いつか、ではなく、いまそのままで
淡い日の光のなかにある、と思える。
わたしの切なさも、世界の一部になる。
切なくても、そうやって強く生きていっていいんだと、
登場人物に寄り添ってみることで、ようやくわかる。


蝉しぐれ」の最後。

・・・記憶がうすらぐまでくるしむかも知れないという気がしたが、
助左衛門の気持ちは一方で深く満たされてもいた。会って、今日の記憶が残ることになったのを、しあわせと思わねばなるまい。
・・・
 顔を上げると、さっきは気づかなかった黒松林の蝉しぐれが、耳を聾するばかりに助左衛門をつつんで来た。
・・・
砂丘の出口に来たところで、一度馬をとめた。前方に、時刻が移っても少しも衰えない日射しと灼ける野が見えた。助左衛門は笠の紐をきつく結び直した。
 馬腹を蹴って、助左衛門は熱い光の中に走り出た。



[rakuten:book:10335433:detail]


じぶん・この不思議な存在 (講談社現代新書)

じぶん・この不思議な存在 (講談社現代新書)


夜、「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」を立川で観た。
「はいー??」としか言えない、感想。